「で、またここに来たと。」

ノアは菓子をぽりぽりと食べながらライアス達を見た。
「嫉妬のが言うとおり、七罪同士に交流があるわけではない。血の契約は、協力するという意味合いではなく利害の一致や気紛れで行われるものだ。」

「他の七罪の場所は知らんが、嫉妬のの屋敷やユーギットの屋敷には魔力が満ちていたはずだ。」
ノアがアフストイを見る。
「嫉妬の。七罪の場所がわかるのは貴殿くらいだぞ。」
「ノア殿、私はノア殿に比べれば若輩者です。力の使い方もろくに知りませぬ。」
「わざわざ指導してやる義理はない。」
ノアは力の使い方を教えるつもりは無いようだ。
「最初にここにその小娘が来たときは、こうも簡単に嫉妬と色欲と血の契約ができるとは思わなかったが。」
ノアがぼそりと言う。
「魔界中を飛び回って探すか、人間界で楽しんでる悪魔を探しだすか、どちらかだな。」
「人間界?!行けるのか?!」
ライアスが驚愕する。
「行けるが、人間界への通路が開かれるのは限られた時間だけだ。3つの月が重なる日だな。ここ数年は3つの月が重なる日も多い。」
「通路が使えなかったらどうすればいいんだ?」
「上級悪魔なら無理矢理ゲートの魔法を使っている。ユーギットはそれが可能だから人間界で女漁りや男漁りをしてるわけだな。」
ユーギットの屋敷に妙に異世界の住人が多いはずである。
異世界の住人はユーギットの屋敷から出てしまえば悪魔の欲求の餌食になる者もいるだろう。彼らに逃げるという選択肢は存在しないのだ。

「まだ俺の力でゲートを開くのは無理そうだな。」
ライアスとドリウスは所詮成り上がりの中級悪魔だった。
「私ならできるかもしれないけどまたユーギットさんの屋敷に行くのは嫌かも。」
アフストイも逃げ腰だ。

「そういえば暴食はどこにいるんだろう…。転生してるとは聞かなかった気がするけど。」
ライアスはノアに問う。
「時が来れば姿を現すだろう。」
「???」
ライアスにはうまく理解できない答えだった。
「時…ねぇ。」

ノアが突然、魔力を発動させた。
何事かと構える3人だったが、攻撃的な魔力ではなかったのですぐに構えを解く。

「まあ、時間も時間だし食っていけ。」
どうやら食事を取り寄せてくれたらしい。
「これって人間界から転移させてきてるよね絶対。まあ、食べちゃうけど。」
人間界のどこかの金持ちの家では食事が突然消えて大騒ぎになっているだろうが、アフストイにとってそれはどうでもいいことだった。
また、アフストイと同じくらい、ライアスとドリウスにとってもどうでもいいことだった。