「…ダーク?」

少し前に会ったはずのダークは色欲と血の契約をしたことにより、凄絶な美形となっていた。


「まさか怠け者のライアスが今更力をつけ始めてるとは思わなかったからね。」
ダークはライアスに対して何もしていないかのような態度だ。
「ダーク、尻尾返してくんねーかな?」
ライアスがダークに問う。
「今なら全部無かったことにして血の契約するから。」
ダークは首を横に振る。長い三つ編みもダークに併せて揺れた。

「ごめん、私が死ぬまで返せない。」

ダークは即答した。
何よりも明確な交渉決裂だった。

「ドリウス、アフストイ。」

面倒くさがりのライアスの声が初めて真剣味を帯びた。

「だいぶ悪魔らしくなったな。」
ダークは呑気にライアスの成長に気づく。

「血の契約を履行せよ。ダークから俺の尻尾を取り返せ。俺も当然戦う。」

アフストイとドリウスが構える。
「嫉妬がいるんじゃ分が悪い。三十六計逃げるが勝ちかな。」
ダークは瞬時に4枚の翼を出し、上空へ逃げ去った。

アフストイが気遣わしげにライアスに説明する。
「尻尾を奪われた悪魔はね、取り返すまで隠せないんだ。」
「切れた尻尾を晒してるのは恥を晒してるのと一緒だな。」
ライアスはため息をつき、尻尾を隠そうとするのは諦めた。

「で、次どこ?」
ドリウスが尋ねる。
ライアスとドリウスの視線がアフストイに集まる。

「だから、七罪みんな仲良しこよしじゃないんだってば。ノア殿に聞くのが一番早いかな。」

ライアス一行は城の調理場に戻ることにした。