「おいおいどういうことだよ、城の北どころか、裏じゃねぇか。」
アフストイの屋敷よりも断然近かった。

アフストイの屋敷に入ったとき同様、勝手に屋敷に入る。
最上級悪魔独特の魔力に満ちていた。
しかし、アフストイとの血の契約によって中の下程度の中級悪魔になったライアスは、アフストイの屋敷に入ったときほどの圧力は感じなかった。
血の契約って便利だよな、と思いつつ勝手に屋敷の奥を目指す。
アフストイの屋敷はアフストイだけが住んでいた様子だったが、色欲の屋敷には何人もの悪魔がいた。
嫉妬のアフストイを連れているせいか、使用人と思しき悪魔達はライアス達を無言で通す。
使用人たちは紺の短いワンピースにガーターベルト、白いエプロンを身につけ、白のフリルのついたカチューシャを装着していた。
時折、どうやって人間界から連れてきたのかは不明だが、人間もいる。

ライアスは通りすがりの人間の娘に話しかけた。
「この屋敷のヌシの部屋はどこだ?」
人間の娘は地下へ降りる階段を指さし、そそくさと立ち去った。
「…なんなんだ?」
「ライアスちゃん、人間にとって悪魔は恐怖の対象なんだよ。」
「そんなもんなのか。」
ライアスは釈然としなかったが、考えるのが面倒だったのかそのまま人間の娘が指さした地下室を目指した。