「ライアス?」

温泉に浸かったままぐったりしたライアスにスノーが声をかける。

「…。」

応答がない。

「湯あたりだわ。とりあえず温泉から出さないと。」

スノーがライアスを担いで温泉を出ていく。
温泉に浸かっていた人間達は驚いた表情をしながらも、スノーを見送った。

「悪魔が湯あたりするか…?」

イブナクがドリウスに訊く。

「姿が人間に近ければ近いほど人間の特性も備わるし。」

ドリウスは温泉を出る。

「イブナクはそこにいて。」

ドリウスは着替えるとスノーに声をかけた。

「スノー、ライアスはオレが面倒見るよ。」

スノーはドリウスをライアスに預けると温泉へ戻った。

ドリウスは涼しい場所にライアスを座らせる。

「そういえば熱いものは嫌いだったな。」

ドリウスがつぶやいた。

「悪魔の傷が温泉で治るなら魔界で銭湯でも創るか?」

ドリウスはライアスの手を握り、魔力を分ける。

魔界に治癒の魔法は存在しない。
契約した悪魔が深手を負った場合は、魔力を分けるという手段が最も多かった。
ドリウスが分けた魔力は多くはなかったが、ライアスの傷は薄れていく。

「疲れてるだろうし、しばらく起こさないほうがいいか。」

オレも疲れたしな。

ドリウスはそう思うとライアスの隣で少しだけ眠った。