「…で、またここに来たと?」
ノアは突然現れたライアス達に、そう言った。
「あなたは…?」
アフストイが急に改まった口調になる。
「ノアだ。」
「アフストイです。」
「現在の嫉妬は貴殿か。」
ライアスとドリウスは置いてきぼりの会話である。
「上級悪魔は色々あるのかねぇ。めんどくさそうだ。」
「で、用件の方だが。」
ノアはライアスとドリウスを見る。
「色欲はこの城の北の方に屋敷を構えている。小娘は…いや、全員行かないほうがいいと思うがな。」
ノアは渋い顔を更に渋くして言葉を濁す。
3人は何が何だかわからない、と言った様子だ。
「色欲だからな。」
ノアはそれだけ言うと、あとは黙々と、前回城に訪れたときと同様に料理を作りながらもさもさと食していた。
「色欲は、男も女も、悪魔も天使も人間も、関係がない。」
「誰でも多少の色欲は持ってると思いますが。」
悪魔に性別があるのは子孫を残すためだと言われている。人間よりは長く生きるがそれでも悪魔の寿命は有限だ。
「魔界の下級悪魔の5%はユーギットの子供だ。」
「…もしかして父親とご対面なのか?」
ライアスが多少嫌そうな顔をする。
悪魔には、人間に存在する家族の情のようなものはない。会えて嬉しい存在というわけでもない。
「怠惰を求めて勤勉に行き着く。」
ノアは再びそう言った。
「どういう条件を提示されるかまでは知らんが、気をつけてな。」
ノアの後半の言葉が棒読みだったが、3人のうち、誰もそれに気づいた者はいなかった。