「あら、困ったわね…。」
スノーが大して困った様子もない声でそう言った。

「わたしたち、この国の通貨を持っていないかも。」

「「風呂に入るのに金がいるのか?」」
ルファン城で勝手に浴室を使っていたライアスとドリウスが驚く。

「魔界はなんでも魔法仕掛けだから一回作れば後の維持費はいらないもの。」

そもそもここ、どこの国の何て村かしら…。

スノーはぽそりとつぶやいた。

「じゃ、僕がちょっと周りを見てきます。」

イブナクがそう言う。

「七罪だの上級悪魔だのは美形すぎて目立つし。そのへんに隠れてて。」

「そうね、イブナクが言うことも一理あるわね。」

「じゃあイブナク、頼む。」

イブナクはライアスを一瞬見ると、ライアスに上着を渡した。

「さすがにその傷は目立つから、これ着て隠して。」

そう言ってイブナクは状況を把握しに、村の中へ駆けて行った。