凍ったまま絶命したダークの体は闇には還らなかった。
ダークの魔力だけがライアスに吸収される。

ダークの魔力を吸収し尽くすと、ライアスは動けるようになった。

切れていた尻尾が元に戻っている。

「俺の魔力…こんなに、あったのか…。」

魔界が神によって統治されていた時代。
まだそんなに時間は経っていないのに、尻尾を奪われてから長い時間が経った気がする。

「俺は力の使い途を知ろうともしなかった。」

ライアスは虚ろな眼で氷の中に閉じ込められたダークを見た。

「その代償が、これか。」

スノー、ドリウス、イブナクは、ライアスの複雑な気持ちを考えると安易に祝福はできなかった。

「あばよ、ダーク。そのまま永遠に眠ってくれ…。」

ライアスはそう言うと、3人のほうを振り向いた。

「次は暴食だな。」
ライアスが感情の無い声で言う。

「そうね。」
スノーは普段通りに答える。

「ライアス…?」
イブナクが気遣わしげな視線でライアスを見ているが、ライアスは気付かないふりをした。

『イブナク、普段通りに接するんだ。』
ドリウスの念話がイブナクにだけ伝わる。

『何も言うな。人間は念話が使えないし。普通にライアスと接するんだ。』

イブナクは非難するような目をドリウスに向ける。

『イブナクに悪魔の何がわかるって言うんだ?文句は後で聞く。今は平常心に徹しろ。』

そこまで言わると、イブナクはダークの件に関して、ライアスに何も言えなかった。

「暴食は…ノアさん、知ってるかな…?」

イブナクは何とか、平常心に見える言葉を吐いた。

「そうだな、城に行こう。ライアスもそれでいいだろ?」

ドリウスがライアスに話しかける。

ライアスはうなずくと転移の魔法を一瞬で発動させた。

まばたきする間に、ライアス達は見慣れた客室に移動していた。