「もう覚えてるか、わからないけど、ライアスはルファン城の前に放逐されていた。」

「生まれて間もない悪魔だってことはすぐにわかったよ。」

「ライアスは七罪の【怠惰】の力を持っていたんだ。」

ダークのその一言で、時間が止まったかのようだった。
全員がその場で凍り付く。

生まれながらの最上級悪魔。
七罪のうちの1人。
怠惰のライアス。

「俺が…七罪の怠惰…だったと?」

「確かにライアスの面倒くさがりは有名だったな。飯を食うのすら面倒がるって。」
下級悪魔だったドリウスはライアスの評判だけは聞いていた。
「でも、そしたらどうしてあっさりダークさんに尻尾を奪われたのか、よくわからなくなっちゃうね。」

「生まれ持った魔力がいかに強大でも、使い道を知らなければ下級悪魔と一緒だ。」
ライアスとドリウスを直視して、ダークが言う。

「私はルファン様が亡くなった直後に怠惰の力を手に入れた。不意打ちという最も悪魔らしい方法でね。」

ライアスは…何も言えなかった。絶句するしかなかった。

「あるいはルファン様が存命だったら、私たちの未来も違ったかもしれないね。」

ダークはライアスの手を取り、バルコニーへと連れていく。
ライアスはされるがままだった。

「だから、神になるまでは尻尾は返せない。そう言っても、ライアスも引く気はないだろう。」
ずっと無言だったライアスはダークを見上げてようやく言葉を発した。

「ああ、そうだな。もうどっちかが死ぬまで、殺り合うしかねぇな。」
ライアスの蒼と紅の目が好戦的な光を宿す。

ライアスとダークは互いに長い長い詠唱を唱えている。

スノーは気がついた。
「2人とも、竜になって戦うつもりだわ…。」

2人の詠唱は息を合わせたかのように同時に終わり…漆黒の竜と色違いの翼を持った蒼い竜が空を飛んでいた。