「あっさり傲慢を手に入れられたな…。」
イブナクがそう言い、不審な表情をしている。
「こっちの嫉妬も向こうに取られてるんだから敵に塩を送ったようなもんだけどな。」
ライアスが冷静に答える。

「強欲のアーヤはどうする?」
ドリウスがライアスにたずねる。
「アーヤの魔力の集まり具合次第だけども、正面切って戦いたくはないな。」
ライアスは嫌そうな顔をして答える。
「イヴファルトが厄介。まさか上級天使を従えてくるとは思わなかったし、もうあれは天界軍みたいなもんだ。」
「そうね。」
スノーが短く同意した。

ライアスはイブナクをチラ見する。
特に何の表情も浮かんでいない。いつもどおりのポーカーフェイス。落ち着いた表情だ。
「強欲とは、血の契約してるから、無視が一番いいな、そのほうがめんどくさくないし。」

「じゃあ次は?」

「面倒だけどまた魔力が濃い場所を探すしかないな。」

ライアスは魔界の地図を出して、魔力の流れを視る。

「このへんかな…。」
一緒に見ていたドリウスが指さした場所はルファン城からそんなに離れていない、中規模の屋敷だった。
「ここにこんなに濃い魔力があったことはないが…。代替わりか?」
ライアスは不思議そうな顔をするが、すぐに考えることをやめた。
「めんどくせぇから行ってみればわかるだろ。」

「ちょっと休憩しようよ。」
ドリウスはだるそうだ。
「サキの傲慢は戦わずして手に入れたんだから、行ってもいいだろ。」
ライアスがドリウスに文句を言う。

「いや、休憩はしたほうがいい。」
それまで黙っていたイブナクが口を開く。

「準備不足だった先代の傲慢の君が辿った末路を考えるなら、準備できるときはすべき。」
サキマの末路。
アーヤに圧されて劣勢だったところで、血の契約をした相手に裏切られた。

「わかった。」
何故か嫌な予感がしたライアスはイブナクの提案を受け入れ、暫く休息をとることにした。