「戦うのめんどくせぇからその約束、俺が果たしてやろうか?」
ライアス以外の全員が驚愕する。
「そうね、別に知らない間柄でもないし。契約してあげてもいいわよ。」
サキは戦わずして契約ができることに心の中では狂喜していたが、表情には出さない。
無言で手のひらに傷をつけ、手のひらに血を溜める。
ライアスも手のひらに傷をつけて、サキの手のひらに重ねる。

淡い闇がライアスとサキを包み込み、血の契約は成立した。

『殺さなくていいのか?』
ライアスの頭の中に、ドリウスからの念話が響く。
『面倒だしな。それに、俺は元々好戦的じゃねぇよ。それに…』
念話で、ドリウスに返事をする。
『アーヤとの戦いは避けられないし…な。』
『わかってんじゃねーか。』

「もう用は済んだ。じゃあな、サキ。」
ライアスはサキにそう言うと転移の魔法を使って一緒に来た3人と共に姿を消した。

「ライアスは、転移の魔法なんて使えなかったのに…。」
サキは神ルファンが死んだ日を思い返す。
サキは傲慢の力を手に入れたが、持て余していた。
それに、サキマから奪った傲慢の力は少々扱いづらかった。

「戦わずにすんだならそれに越したことはないわね…。」

悪魔の力を強くする方法は1つではないのだ。
塵も積もれば山となる、と人間界の言葉にもあるのだ。
サキはこれまでどおりにちまちまと力を集めることにし、魔界の空へと飛び立った。