涙が頬を伝う感触でライアスは目が覚めた。
ライアスが目覚めたのは魔界の3つの月が昇る頃だった。元々、魔界は薄暗い。
昼の概念も夜の概念もない。
便宜上、悪魔たちは月を基準として生活しており、月が3つ出ている時間は眠っていることが多い。
赤い月と緑の月と青い月が魔界を照らしている。
窓から差し込む白い光を見て、ライアスは物思いにふける。
「あれくらいのことで、ショックを受けたのか。平和ボケしてたのかもなぁ。」
ライアスはぼそぼそと独り言をつぶやく。そして隣に転がっている物体に気がついた。
「あれ、ドリウスじゃん。」
ライアスはドリウスの髪の毛を引っ張ってみた。
「いててて…。」
ドリウスが目を覚ます。
「なんかうなされてたから様子見してたら落ちちまった。」
「もう子守はいらないトシだ。多分。気づいたら放置されてたから何歳かは知らないけど。」
ライアスは面白くなさそうな顔で起きる。いつもより背中が軽い。
「翼が隠せると上を向いて眠れるんだな。」
新たな発見だった。

「ライアスちゃんやっとお目覚めかな。」
突然かけられた声にライアスは驚く。
「アフストイか。」
「聞きたいんだけどさ~。ライアスちゃんはどうして私と血の契約をしたかったの?」
「一生怠けて生きるためだ。」
「私と血の契約しただけじゃ一生怠けて生きていくのは難しいけど。」
「だから魔界の神になることにした。」
ドリウスはニヤニヤしている。アフストイは少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ。
「神になったら私に力を頂戴ね。悪魔に力を与えられるのは悪魔の神だけだから。ま、私は先代様からはもらったことないけど。」
「神になれないことは考えてない。面倒だから。」
アフストイは呆れた様子だったが、異論は言葉に出さなかった。