「ノア様…。」
ダークは言葉が出てこない。

「気配を消したつもりだろうが、さすがに上級悪魔に侵入されればオレでも気づく。」

「ライアスにかけた魔法を解けとまでは言わないが、見過ごすことはできない。」

ノアは中立の立場を貫くつもり…らしい。

「ご心配には及びません。あと3日もすれば目覚めます。」
薄く微笑み、ダークが言う。

「ライアスと敵対しながらも、助けるような真似をしている。矛盾しているな。」
ノアが鋭い目でダークを見るが、ダークは表情を変えない。

「オレがオマエの記憶を暴いてやろうか?」

「暴かれて困る記憶はございませんが、知られると少々まずいこともございますので、これにて失礼致します。」
ダークは一気にそれを言い切ると、目の前から一瞬で消えた。

逃げ足の速いヤツだ…ノアはそう言いながら調理室に帰ろうとする。

「ノアさん…なんでここに?」
イブナクがもっともな疑問をぶつけた。
「誰に肩入れするつもりもないが、テリトリーに侵入してきた者がまた来たのでな。」

ノアは、調理室に行こうと向きを変えた。
しかし、その直後思い出したかのようにイブナクのほうを振り返る。

「悪魔狩り。強欲のと連絡を取れ。小娘が眠りこけている間に魔界の状況はだいぶ動いたぞ。」

小娘、がライアスを指すのは知っている。

イブナクはノアに言われたとおりアーヤに水鏡で連絡をとった。

傲慢のサキマが、アバドン共々サキに殺害され、今の傲慢はサキに代替わりしているとのことだった。

「七罪の入れ替わりが激しいわね…私もいずれ代替わりするのかしら。」
スノーは無表情で、何を考えているのか読み取れない。
「元人間である限り、魔法以外の要素で負ける要素はないけど。」

この件をきっかけに、スノーはライアスが目覚めるまでの間、城の魔法書を残らず読み漁った。

イブナクとドリウスは交代でライアスについていた。
ライアスの記憶を覗いてしまった後では、ライアスの寝顔も違って見えた。
ひどく疲れて眠り込んでいるような、そんな気がしたのだ。