「ちっ、弾かれた…こっちから回って…、」

「元々強情だったけど、ここまでとは…。」

「私だよ、ダークだ。」

どのタイミングで、なのかはわからない。魔法は発動したらしい。
ダークはライアスの意識と対話しているように見える。

「思い出して…、嫌?それは聞けない。」

「完全に忘却するまで眠ってるつもりはないだろう?」

「それに触れるのが嫌なら…ルファン様が亡くなる前のことを思い出して…。」

「そうだね、悪かった。でもまだ理由は話せない。」

15分ほどだろうか。
ダークがライアスの意識に潜り込み、押し問答を続けた結果。

全員が、夜中の城の屋上にいた。

「これは、ライアスの記憶に入ったというか、ちょっとズルをしたというか。」
術者のダークが解説する。
「ここで起こる全ての事象に私たちは手を出すことができない。」
ちょっと時間をいじったからね…なんでもないことのようにダークが言う。

「あっちにダークさん?の姿があるんだが。」
イブナクが城からはるか遠くで浮遊しているダークを目敏く見つけた。

「私の記憶を再生しても仕方ないでしょう。イブナクさんが知りたがってるのはアフストイを殺したときのライアスの気持ち、だ。」

何を話していたのかは聞こえてきた。

「嫉妬の君の力を取り込んだから、嫉妬の君の気持ちまでダイレクトに伝わってくるみたいだね。」
どうやらダークとイブナクがアフストイに嫉妬されていたようだ、という事実まで突きつけられる。

アフストイの嫉妬、ライアスの混乱が直接的に伝わってくる。
2人の別個の悪魔が考えていたことが混ざって、もはや精神攻撃のような状態だった。

殺らなきゃ、殺られる!

ライアスの気持ちが強く流れこんできた途端、アフストイの頸動脈に蒼い剣が刺さる瞬間が見えた。

ライアスの後悔の念と、死にゆくアフストイの不思議なまでに凪いだ心。

暫く経ってからドリウスが姿を現した。
そこで、魔法は途切れた。