「わたしも知らないわ。」
スノーが答える。
「…暴食の君?憤怒の君?…どちら…でしょうか?」
スノーが発する魔力は七罪の悪魔以外にありえなかったので、ダークがスノーに訊く。

「憤怒のスノー。」

「では、血の契約をお願いしたいのですが。」

スノーは怪訝な顔をする。

「ただでとは申しません。アフストイを殺したライアスの記憶、感情を再生するだけです。」

スノーは迷った。

「人の頭の中身を勝手に覗くなんてどういう神経してるんだ…!」
珍しくイブナクの口調が強くなる。
まさしく、スノーの迷いを的確についた言葉だった。

「私達は悪魔だしね。人間にはわからないだろうけど。」
ダークの言葉に、イブナクをバカにしたような様子はない。

「でもね、何も話さずにこんな状態になったライアスが悪い。」

「この状態で頭の中身を覗かれても、誰も文句を言えない。もちろんライアス自身も言わないと思うよ。」

「悪魔なら、そう考えるからな。」

自ら育てた子悪魔に対して容赦無い態度だった。

「わかったわ。血の契約をしましょう。」

スノーはダークが出した条件を受け入れた。

ダークは攻撃魔法のような瞬発的に唱えられる魔法とは違い、長い呪文を唱える。
ライアスの記憶を覗き見る魔法は炎や吹雪を出すより余程難しいらしい。