「作戦変更、目標はサキ!余の前で武勲を立ててみせろ!」
アーヤの指令が響き渡る。

魅了されて使い物にならなくなった男性陣は9割ほど。女性は1人しか魅了されていなかった。
そもそもここまで女性が多い軍だとサキの魅了では戦力の大幅な減少は期待できない。

十数人に矢を射られ、アーヤ自身から攻撃魔法を放たれ、イヴファルトはひたすら天界から光の柱を落とし続ける。

「1人は不利ね。強欲の君、また今度。」
サキは翼を広げる。赤紫の、竜のような翼だった。

「逃がすかっ!」

サウラーが短刀を投げる。サキの翼の鱗の間に綺麗に刺さった。
サキは翼から血を滲ませながらも飛んで逃げた。

「余についてこい、イヴファルト!総員待機!」
アーヤとイヴファルトは空を飛んでサキを追う。

サキは血塗れだが、ほとんどが返り血だ。
逆にこの機を逃せばどこに逃げられたのかわからなくなるだろう。

しかし人間界に長くいて、ほとんど飛んでいなかったアーヤの飛ぶ速さではサキに追いつくことはできなかった。
魔界の風を捉えきれなかったイヴファルトもそれは同様だった。

アーヤ軍とサキマ勢の戦いの結果は。
サキマは倒したが、当代の傲慢がサキに代替わりしただけという結果に終わった。