「そもそも悪魔の寄せ集めで統率を取るなどほぼ不可能でしょう、サキマ様。」
アバドンにそう言われ、サキマは少し冷静さを取り戻す。

ダークは空中から弓を乱射しているが、アーヤが連れている天使の加護の力で一本も当たっていない。
「天使を連れている相手には分が悪いんだけどー…でも屋敷も壊されちゃったしねー…。」
「サキマ様、ここは離脱したほうがいいでしょう。」
ダークがサキマに進言する。

「それはできねーよ、ダーク。」
サキマの紫の瞳が戦意でギラギラとしている。
「屋敷はまた立て直せばいいかもしれないけどねー…。」

サキマは少し間をおいて、続きの言葉を紡ぐ。
「ここで逃げたっってゆー事実だけは残っちゃうわけ。そんなのプライドが許さない。」
「プライドなど時に邪魔なだけですよ。」
ダークはサキマを説得しようと試みる。

「逃げたり隠れたりはごめんだね。それくらいなら死を選ぶ。」

サキマは普段のふざけた表情ではなく、至極真面目な表情をしていた。
「華のように美しく散る。」

悪魔のくせに妙に潔いサキマだった。

しかし、サキマがそう言った直後。

サウラーと斬り合っていたサキがサキマの背後に転移し、サキマの左胸を鋭い爪で貫いた。

「それじゃ困るのよね、強欲の君が傲慢の君も兼ねてしまったら。」
サキがサキマの身体を貫いた爪を抜く。
「わたし、魔界の神になれないじゃない?」
サキマの身体から鮮血が吹き出す。

「なんてことを!サキマ様!」
アバドンがサキマの傷を塞ぐためにアバドン自身の生命力を分けるが、さすがに致命傷となる傷はふさがらない。
真っ赤な返り血を浴びたサキの美貌は壮絶の一言に尽きた。

「ぐ…ぁ…、サキに…裏切られるなんて…」
口と左胸から血を撒き散らしながらサキマが言葉をしぼり出す。

「同じ父親から生まれてきたのに私はただの悪魔、サキマは傲慢。」
サキは冥土の土産とばかりに一方的にサキマに話しかける。
「悪いけど、アンタの傲慢はわたしがもらうわ。」

サキマの身体は闇となり、サキの身体に吸収された。