強欲のアーヤと傲慢のサキマの決戦の日。

アーヤが一方的に決めた日付だが、サキマも嫌な予感がしていたので、それなりに備えていた。

サキマの屋敷の結界は硬かった。

「イヴファルト殿、頼む。」
アーヤから依頼され、イヴファルトは天の魔法を使う。
「Nemesis(ネーメズィス)!」
天界から降ってきた光の柱がサキマの屋敷の結界を打ち砕く。

「天罰、か。イヴファルト殿は天使だと再認識させられるな。」
見事結界を破壊した魔法の意味を理解し、アーヤがつぶやく。
「斬込はイヴファルト殿に任せる!弓を使える者は続け!」

イヴファルトは特大の光の矢を放ち、屋敷の玄関を破壊する。
その破壊は扉だけでは収まらず、壁ごと光で消し飛んだ。
その穴から弓を使える者が屋敷内へ侵入する。

「まさか堂々と玄関から来るなんて想定外だなー。」
余裕の表情で傲慢のサキマが屋根の上で浮遊していた。

さらに上を取られていたことに気づき、イヴファルトは結界の壊れた屋敷に再び魔法を使う。
「Nemesis(ネーメズィス)!」
屋根が崩れ、サキマ勢の人間達は足場を失い、落下する。

「げっ…天使…。」
サキが怯む声が聞こえるが、サキマは冷静だった。

「アバドン、おもてなしを。」
サキマが執事のアバドンに命じる。
アバドンは魔力で創りだしたレイピアを手に、イヴファルトに斬りかかる。

「させないっ!」

悪魔狩りの少年…サウラーが左手の小さな盾でレイピアを受け、イヴファルトを護る。

「この前のイブナクとかいう小僧と同業ですか。イブナクには借りがあるから貴殿で返させていただきましょう。」

アバドンはサウラーを相手と定め、斬りかかる。

イヴファルトは悪魔狩り達に護られながら、唄う。

「さて、聖歌を聞いて起きていられる人間は何人いることやら。」
アーヤはイヴファルトの美声を聞きながらニヤニヤしているが、サキマの魔法が飛んできたので最小限の動きで避ける。

「傲慢の、魔法がお好みか?」
アーヤは不敵に笑う。
「汗くせーの嫌いだし。」
サキマはそう言うと短い詠唱時間で魔法を唱え終わる。
「Windhose(ヴィントホーゼ)!」
突風がアーヤに襲いかかり、アーヤは翼を出して上空へと避ける。

人々の口伝で語り継がれているとおり、アーヤの翼は蒼い竜のような翼だった。