アーヤとイヴファルトは悪魔狩りの詰所の訓練所に入った。

「あっ…陛下!」
「陛下がいらっしゃったぞ!」
アーヤの顔を知っている者がいたのか、訓練をしていた悪魔狩りたちがアーヤのほうを向いてひざまずく。
何年も変わらない容姿というのは顔を覚えてもらうという点では便利だ。
それが原因で世間の噂ではアーヤが悪魔であることになっているわけだがそれはアーヤにとっては些細な問題だった。
それは、事実だからな。余がわざわざ否定する必要もない、というのがアーヤの感想である。

「2日後に最上級悪魔を狩る。腕に覚えのある者は余についてきたまえ。」

アーヤは悪魔狩りたちにそう言った。

だいたい10名ほど集まる。

見た目で、30歳前後の者が多いが、イブナクと同じ年頃の者もいた。
アーヤは若者の名前を問う。
「随分若いが…、名は?」
「サウラーです。」
確か、イブナクと仲が良かった悪魔狩りだ。
イブナクと切磋琢磨しながら強くなったのだろう。アーヤは人間達のそういう感情は嫌いではなかった。

「しかし、長から借りることができるのは9名までと約束をしておってな。そうだな、くじ引きでもするか。」

ライアスは10本の細い紙を手品のように出し、1本にハズレと書き込むと、イヴファルトに持たせた。

「ハズレを引いた者は居残りだ。」

イヴファルトの手から10人がそれぞれくじを引く。

30歳前くらいの悪魔狩りがハズレを引いたようで、露骨に拗ねている。

「これが最後の戦というわけではない、落ち込まないことだ。」
アーヤはハズレを引いた者にそう声をかける。

「出発は2日後だ。期待しているぞ。」
アーヤはそう言うと、イヴファルトと共に転移で姿を消した。

悪魔狩り達は唖然とした。
しかし、魔界と人間界を行き来する彼らはたいして衝撃も受けず、黙々と訓練に戻ったのであった。