「魔界には、本来、神がいる。」

「先代の魔界の神は、ここにいるイヴファルトの姉天使だった。」

「しかし、最近、魔界の神が死去した。」

「魔界は今、誰が次の神になるかで揉めている。もちろん、武力、魔力、知力、様々な方法で高みを目指す悪魔たちで溢れている。」

「少し前にここに迷い込んだライアスも高みを目指す悪魔だ。」

「魔界の神になるためには、七罪の協力を得るか、倒すか。とにかく、七罪の全てを従わせる必要がある。」

「悪魔でも、天使でも、人間でも。最初に七罪を従わせた者が、魔界の神となる。」

「噂には聞いているだろうが、余は悪魔だ。七罪の、強欲のアーヤだ。」

「余は、余が手に入れた国民たちを害する悪魔たちを許さない。」

「そのためには、余が魔界の神になって悪魔どもを統制する必要がある。」

「手始めに傲慢のサキマを倒すつもりだ。」

「傲慢のサキマは人間界から迷い込んだ者や、時には人間界から人間を連れ去って、天界の武器を使える者たちを集めている。」

「案ずるな。人間を傷つける気はない。目的はサキマの命、あるいは、服従させることだ。」

「…こんなところだな。」
アーヤが話を終える。
「そうですか。それならば、9名、連れて行ってください。」
長はアーヤに言う。
「命の保証はする故、心配する必要はない。」
アーヤは長に対してもそう言い切った。

「では、適当に9名、選ばせてもらうぞ。」
アーヤが長の部屋を出ようとしたその時。
「陛下。」
長がアーヤを呼び止める。
「イブナクは…」
「ライアスの元にいる。ライアスたちも少々ごたついておってな。だが、イブナクなら戦で死ぬことはあるまい。」
アーヤは長が聞きたかったことを既に把握していたので、先回りして答えた。

長は明らかに安心した表情でアーヤとイヴファルトを部屋から送り出した。