アーヤとイヴファルト、勇者志願者は2日後にサキマの屋敷を急襲することにし、一度人間界へ転移した。

「余が魔界をうろうろしていては目立つだけだからな。」
強い魔力を放つ、見慣れない悪魔がいたらそれだけで目立つことは間違いない。
それに天使であるイヴファルトも魔界では目立ってしまう。
2日後が決戦と決まっては、勇者志願者達の中には恐怖を抱く者も現れたが。

「そなたらは余の国民だ。命だけは保証するが故、安心して戦うがよい。」

アーヤがそう言い切ったため、人間達の張り詰めた空気はだいぶ緩み、平常心が戻った。

人間達を王宮の客間にそれぞれ通す。
最後の一人が部屋に入るまでを見届けてから、アーヤがつぶやいた。

「悪魔狩りにも協力を要請するか…。イヴファルト殿、余についてきてくれたまえ。」
「はい。」
一度、勇者志願者たちに強欲のアーヤであることを明かしてしまったが、それなりの利点もあった。
もう、アーヤが魔法を使っても誰も驚かない。

アーヤはイヴファルトの手を握ると、転移の魔法を発動させる。
瞬きをする間に静寂の森の近くにある悪魔狩りの詰所に到着する。

詰所の門番はアーヤの顔くらいは知っているようで、顔パスで詰所に入ることができた。

アーヤは詰所の奥に入り、一応ノックをしてから最奥の部屋の扉を開ける。

「これは…アーヤ陛下、イヴファルト様。」
詰所の長がアーヤの目の前でひざまずく。
イヴファルトとも顔見知りのようだ。

「立ちたまえ。鬱陶しい礼儀は抜きだ。余は何人か悪魔狩りの者たちを借りたくてここに来た。」
アーヤは手短に用件だけを話した。

「何名ほど必要でしょうか?」
長がアーヤに訊ねる。
「9人でいい。」

長は難色を示す。
「それは…多いですね。」
「悪魔狩りも余の国民である故、命の保証はする。それに、2日後なら悪魔が静寂の森から迷い込んでくることはない。」
「わかりました。9名、連れて行ってください。しかし、わたくしめにも魔界の事情を教えていただけませんか。」
長は真っ直ぐにアーヤを見る。

アーヤは長に対して、真実を話し始めた。