イヴファルトはアーヤの目の前に着地する。
「アーヤ様、おひさしぶりでございます。」
イヴファルトは優雅に礼をする。
「そんなに久しぶりでもない気がするが…そんなに余に会いたかったか?」
アーヤがイヴファルトに聞き返す。
「はい。ご報告したいことがありましたので。色欲の君と真名の契約ができました。」
「魂の、ではなくて真名の契約か。ふむ、色欲の色香が効かぬとはな。」
上級天使だからか、強固な意志を持っているからか、それか、その両方か。
イヴファルトが色欲の色香に惑わされなかった理由など、アーヤにとってはどうでもよかった。

「以前は清楚なだけだったが、少し色気が出てきたな、イヴファルト殿。」
イヴファルトは恥ずかしそうに目を伏せる。
「魔界で力を得るということはそういうことだ。外見は悪魔的になっていく。ただし、力がある者ほど美しいのは天界と変わらない。」
アーヤはイヴファルトに事実を告げる。
「そうなのですか。」
イヴファルトはそう言うと少し黙り込んだ。

「わたくし、アーヤ様についていってよろしいでしょうか?」
突然のイヴファルトからの申し出にアーヤは驚く。
「構わんが、これから傲慢のと全面戦争をすることになるぞ。」
「わたくしの天界の魔法が役に立つこともございましょう?」
イヴファルトはアーヤが絶対に肯定せざるを得ない理由を言う。
「そのとおりではあるが、余は自分が神になるために行動しているのであるぞ。」
「存じておりますわ。」

イヴファルトは少し懐かしさを込めた目でアーヤを見つめた。
アーヤは当惑したが、申し出としてはありがたかったので、イヴファルトの申し出を受けることにした。
「では、よろしく頼む。」
「はい。」

アーヤは銀髪碧眼だ。
イヴファルトの姉、堕天使ルファンも銀髪碧眼だった。
イヴファルトは、単にアーヤに姉の面影を見つけたので、しばらくついていくことにした。

ノアから聞いた、姉ルファンの死因は殺害などではなかった。
イヴファルトは自らの意志で堕天してきたにも関わらず、道を見失い始めていた。