時間は少し遡る。

アーヤがダーク、勇者志願者、ライアス達と話してから数時間後。

アーヤはサキマに連絡をとり、転移の魔法で魔界に出向いて誠心誠意、土下座して謝罪した。
しかしプライドの高いサキマの許しを得られるはずもなかった。

それから、昼間は人間界の大国の主として働き、夜間は魔界で勇者志願者と共に七罪を探して行動するという二重生活を送ることになった。

二重生活を送り始めて間もなくのことだった。

悪魔狩りのイブナクから水鏡で報告があった。

「嫉妬のアフストイをライアスが殺害。」

嫉妬のアフストイと、悪魔狩りのイブナクと、ライアス。
三者が居合わせた瞬間に、いつかはこじれる三角関係だとすぐに気づいたが、こうもあっさり崩れるとは思っていなかった。

ライアスの自由奔放な性格は知っていた。
人間界の常識を知らなかったとはいえ、真夜中に一国の主の部屋に侵入するような悪魔である。

嫉妬のアフストイからライアスに向けられている独占欲にもすぐに気がついた。

無論、アーヤは最初からイブナクがライアスに好意を持っていることにも気づいていた。
イブナクは堅物だ。イブナク自身が持ち得ない自由さを持っているライアスに惹かれるのは人間の思考としてはではごく自然なことに思えた。

ただ一人、気づかなかったのは…知らなかったのは…ライアスだけである。

おそらく、アーヤが人間界の結婚の概念を話してしまったことが三角関係崩壊の原因であることは薄々は察した。
しかし、だからといって殺し合いにまで発展したのはアーヤにとっては知ったことではない。

イブナクから水鏡で報告を受けてしばらくすると、イヴファルトが飛んできた。
文字通り、魔界では目立つ真っ白な翼を羽ばたかせながら。