サキマは七罪として、決して弱くはないが、敵は、サキマ達が万全の態勢のときに攻め込んでくるとは限らないのだ。
それを、前回の戦闘で嫌というほど思い知ったサキマだった。

サキマがそんなことを考えている時、ダークが目の前に現れた。転移の魔法で戻ってきたようだ。
「サキマ様、ご報告が。」
ダークがサキマの前でひざまずく。
「なんだ?」
「嫉妬のアフストイが殺されました。」
サキマは呆然とする。
「ヤツとはオレが決着をつけたかったけどしかたねーか。アフストイを殺ったのは誰だ?」
「ライアス…今は、嫉妬のライアス、でございます。」
サキマは言葉が出なかった。

数十秒が経過してから、サキマはダークに尋ねる。
「オレが見る限り、あいつらは悪魔にしてはキモいくらい仲良しこよしだった記憶があるんだけどどーゆーことよ?」
「痴情のもつれ、ですね。」
ダークは、水鏡でライアスがアフストイを殺害する様子を見ていた。

「そーいえばダークの翼を斬り落としたときに天使のよーな笑顔だったな。」
サキマは敗色濃厚だった戦闘を思い出す。
「ふん、小娘とはいえアイツは最も悪魔らしい悪魔ってことだな。」
サキマは大して面白くもなさそうに豪華な椅子に座り、足を投げ出した。

ライアスの出生は謎に包まれているが、それは悪魔なら誰でも同じ事。サキマのように、両親の素性がわかっていることのほうが珍しい。
ダークは生まれて間もないと思しきライアスを保護した。
ライアスは並大抵の器ではないとは思っていたが、ここまで力をつけるのはダークとしても想定外だった。

「今は小娘たちに割く時間はない。強欲のと決裂したからな。」
サキマは余裕の表情を装っているものの、内心、焦っていた。
そして、それはアバドンもダークも把握していた。