ライアスが眠り始めたのと、時を同じくして、サキマ達は療養をしていた。

人間界から迷い込んできたり、連れてきた者たちには天界の加護を受けた武器を使わせて最低限の武術訓練をさせていた。

「アーヤのヤツ、肝心なときに志願兵を送り込んできやがって…。」
しかし、傲慢のサキマは、アーヤの志願兵がいてもいなくても、ライアス達が攻めこんできたときは敗色濃厚であったという事実は認めていた。
「アフストイの野郎…、オレに協力しなかったことを後悔させてやる。」
サキマが恨んでいるアフストイは七罪の力をライアスに託し、既に魔界に存在しないのだがサキマはそのことを知らない。

「アバドン、傷はどーだ?」
サキマは部屋の隅に控えていた執事に怪我の具合を尋ねる。
「サキマ様のおかげで予定より早く治りそうですな。」
サキマは下級悪魔の尻尾やら翼やらを奪ってきてアバドンに与えたのだった。
サキマの持論は【魔界では弱いこと自体が罪】だ。

サキマは傷自体は大して負っていないのだが、魔力の回復までだいぶ時間を必要とした。
血の契約をしたダークは今は姿も見えないし、気配も感じない。
ダークはサキマの配下にくだったつもりはないのだが、しばらくサキマの屋敷に滞在していた。
翼を斬り落とされた怪我はなかなか治るものではないし、翼を奪われたことで翼を隠すことができなくなっている。

「あのいけ好かない小娘、天界の武器を自ら使うなんて…狂いすぎだろ。」
サキマの、ライアスに対する本音だった。
「あの悪魔狩り、こっちの味方につけられないもんかなー…。」
サキマがぶつぶつと独り言をつぶやいている。
「サキマ様、あの者はアーヤ様の斥候、こちらに引きこむのはいかがなものかと。」
アバドンがサキマを諭す。
「それもそーだな。」
サキマはあっさりと考えを切り替える。
一刻も早く傷を治さなければならない。