ライアスが眠っていても、起きている3人は当然空腹になるわけで。

ノアが居座る調理場へ向かう。

そこには何故か上級天使のイヴファルトがいた。

「あ、天使。」
「イヴファルト様何故ここに。」
「誰この子。」
三者三様の反応を返す。

「ユーギット様と真名の契約をしてまいりましたわ。」
イヴファルトは天使の笑顔で聞かれてもいないことを答える。
「そ…それは…大変だったな…。」
ドリウスが若干引き気味にイヴファルトを見る。

「お初にお目にかかります。わたくしは上級天使のイヴファルトと申します。憤怒のスノー様でいらっしゃいますよね?」
「そうよ。わたしに何か用?」
スノーが冷たい目でイヴファルトを見る。
「わたくしと真名の契約をしていただけませんか?」
「嫌。天界の神だの天使だのはわたしが悪魔堕ちするほど追い詰められても助けてくれなかったじゃない。」
イヴファルトは気遣わしげな目でスノーを見る。
「その目、いらつくわ。」
スノーはそれきりイヴファルトから視線を逸らし、目を合わせようとしなかった。

気まずい空気など全く読みもせずノアが口を開く。
「飯なら一応作ってあるぞ。」
「まぁ、これは豪勢ね。」
スノーが嬉しそうな声をあげる。

白くてふわふわした粒がいっぱい盛りつけてある食器。
白くて軟らかい立方体と、オレンジ色の食べ物や、小さい緑色の丸い輪っかが浮いているスープ。
切り身と思われる、ピンク色の焼き魚。

「おいしいけど、見たことがない食べ物。」
イブナクがぽそりとつぶやく。
「そうね、わたしも見たことがないわ。」

ノアが「ごはん」と「みそしる」と「やきじゃけ」と答える。
「一応人間界の食べ物だ。極西にある小さな島国のな。」
「そうか。いずれ人間界も見て回りたいかも。」
ドリウスが言うが。
「やめといたほうがいい。悪魔は人間から攻撃を受けるから…。」
イブナクがすまなそうな声で言う。
「そうね。わたしも人間だったときは悪魔は忌むべきものだと思っていたわ。」
スノーはイブナクに同意する。