ライアスとドリウスはしばらく床にへたりこんでいたが、ドリウスのほうは暫くすると気力を振り絞って立った。
「立ち上がるのめんどくせぇ。」
ライアスはいつもどおりのセリフを吐き、立ち上がろうとしない。
その瞬間、ライアスとドリウスは転移していた…いや、アフストイによって転移させられていた。

ライアスの部屋は客人をもてなすような部屋であったが、ドリウスの部屋はこの豪華な屋敷のどこにこんな粗末な部屋があったのかわからないといった様子の部屋だった。
天蓋付きのベッドと粗末なベッドである。
しかも嫌味かのように、部屋と部屋は内部の扉で繋がっていた。
ドリウスは興味深そうに部屋を見て回るが、ライアスは見るのも面倒、とばかりに天蓋付きの豪華なベッドのほうに倒れこんだ。
「寝るって至福だよな。」
「血の契約は、相手に向かって破棄すると言わないと危害を加えられないから、ライアスは安全だろうけど、オレはあぶねぇかも。」
「あの様子だとアフストイはドリウスのことも面白がってたようだが?」
ライアスが面倒くさそうに問い返す。
「そう言えば明日からついてくるとか言ってたな。」
ドリウスは再びニヤニヤする。
「昼も夜もない魔界で明日っていつだよ。」
「目が覚めたときでいいんじゃね?俺は寝る。おやすみ。」
ライアスは強引に会話を打ち切るとすぐに寝息を立て始めた。
ドリウスも疲れていたが、珍しくニヤニヤした表情が真剣な表情へと変わっていた。

「安全のためにはいたしかたなし。」
ドリウスはライアスのベッドに潜り込むと眠りに落ちた。
アフストイと血の契約をできなかったドリウスにとって、この屋敷は決して安全とは言えないのだった。