アフストイは静かに転移を発動させる。
このルファン城の頂上にライアスと一緒に転移する。

「さむっ!」
ライアスはすぐに目を覚ました。
「なんだ、アフストイか。どうしたんだ、こんな時間に。」
赤と青と緑の月が空に浮かんでいる。

「今日は月が綺麗だね、ライアスちゃん。」
ああ、違う。そんなことが言いたいんじゃなくて。
「ああ、重なってないしな。」
ライアスは空を見上げて同意する。

アフストイは勇気を振り絞る。
「ライアスちゃんって誰が好きなの?」
「好き嫌いでわけるなら俺に味方してくれる奴は皆好きだな。」
ライアスは即答する。
「でも、味方なんかしてくれなくても、ダークのこと嫌いになれないんでしょ?」
「あぁ…ダークと過ごした時間は長かったから。」
ライアスは遠くを見る。

「ダークと過ごした時間は死ぬまで続くと思ってたぜ。ルファン様さえ、亡くならなければな。」
「そっか。」
やっぱり未練たらたらじゃないか。ライアスがダークを好きなのはわかった。

「ねぇ、今日、アーヤ殿から人間界の結婚の概念を聞いたよね。」
「おう。」
「ライアスちゃんは、結婚するとしたら、誰を選ぶの?」

ライアスは言葉に詰まる。
「そういうの、俺、人間じゃないからわからないぞ。」
ライアスは渋い顔で言葉をひねり出す。
「私とか、どう?」
アフストイはさりげない感じでライアスに訊いてみる。

「そんな先のこと考えたこと無いな。」
「そんなに先でもないでしょ。サキちゃんは色んな悪魔と既に魂の契約をしてるんだし。」
「サキが何歳かなんて知らないぞ。その質問、今答えなきゃだめなのか?」
アフストイは悪魔には珍しい寂しげな表情をする。
「今…聞きたいな。」

「うーーーん…、イブナク?かな?でも人間と悪魔じゃ寿命が違うしなぁ。」
アフストイがある程度想定していた答えとはいえ、本人から聞かされるのは…つらかった。
「私じゃだめ?どうしても?」
「だめと言ったつもりはないんだが…。」
恋愛のれの字も知らない子供にそんなことを聞いても仕方ないわけだが、アフストイの嫉妬はもう止まらないレベルだった。

「私ね、最近ライアスちゃんが悪魔狩りと一緒にいるの見るのつらいの。」
「いや、つらいって言われても…。アフストイだってイブナクと一緒にいるだろ。」
ライアスは根本的によくわかっていないらしい。

「私を選んでくれなきゃ、やだ。」
ライアスはとうとうキレた。
「だ・か・らっ!わかんないって言ってるだろっ!」
「わかんなくてもいい、嘘でもいいから、私のこと好きって言って!」
アフストイが声を張り上げる。