「で、結局またこの城ry」
「人間の悪魔退治どもが屋敷の周りうろついてて帰るに帰れないんです。」
ノアに呆れた声で言われ、アフストイは必死で言い訳をする。
「知らんわ。さっさと食ってから寝ろ。」
ノアは珍しく不機嫌そうだった。

『おおかた、一緒にいる悪魔狩りに気を遣って殺すに殺せないのだろう?』
悪魔たちにだけ、ノアの念話が届く。
『俺は殺してもいいと思うけど。アーヤとは血の契約はしたけど、決裂したし。』
『もっと慎重に動くべきだよ、ライアスちゃん。まだ、殺すのは得策じゃないと思うよ。』
『プライドの高い傲慢のことだ、アーヤの集めた人間どものせいでオレたちを殺し損ねたわけだし。』
過激な言葉を発するライアスを、アフストイとドリウスが念話でなだめる。

悪魔だけが黙ってしまったので、イブナクは不思議そうな顔をしていたが、ノアの料理がおいしかったのでもさもさと食べていた。
やはり年頃の、人間の男子である。
スノーは何か思うところがあるのか、イブナクを見ていた。
早々に結婚して、実家を出ていってしまって音信不通となった息子の面影を見ているのだろうか。

その後は特に会話をすることもなく、それぞれが迷いや考え事をしながら、早々に客室と思しき部屋に引き上げた。
いつもはうるさい連中なのだ。ノアは、嵐の前触れかのような気がした。