「へぇ、耐えられるんだ?」
アフストイは邪悪な微笑を浮かべた。
「どういうことだ…?」
「だいたいの下級悪魔は私の魔力で潰れちゃうの。何人か、耐え切れなくて飛んでっちゃった。」
アフストイの屋敷に到着する前に何人かの女悪魔とすれ違った理由がわかった。
彼女らは耐えられなかったのだ。最上級悪魔から流れこんでくる圧倒的な魔力に。

「ライアスちゃんがどういう生い立ちか知らないけど、面白いね。暫く観察させてもらうとしよう。」
「生い立ちとか言われても俺は気がついたときにはそのへんに放置されてたからなぁ…。」
「普通の悪魔はそうだぞ。」
ドリウスのツッコミが入る。ドリウスのニヤニヤした顔が初めて歪んでいた。
「ドリウス君もライアスちゃんと血の契約してるから私の魔力の影響を受けるよ。へぇ、ドリウス君も耐えるんだねぇ。」
ライアスとドリウスを嬲るかのように長々と血の契約をした後、アフストイは悪魔的な笑顔を浮かべ、
「観察どころじゃ物足りないかも。私もついてっちゃおうかな。」

「勝手にしろ…。」
どこにも傷が無いのにライアスは床に座り込んだ。ドリウスは一応立っているが全身に冷や汗をかいている。

「もう中級悪魔程度の魔力は手に入れたはずだよ。中の下くらい。ライアスちゃん、翼を隠すことができると思うけど。」

アフストイに言われ、ライアスはツノを隠しているのと同じように、翼を隠そうと念じる。
ライアスの翼はライアスの体内に消えた。

「翼を奪われるよりはマシだが…しまってるとバランスがうまく取れないな。」
「すぐ慣れるっしょ。」
ドリウスに声をかけられたが返事をする気力もなかった。ただただ、面倒だった。

「今日はここに泊まるといいよ。明日からは私もついていくね。」
アフストイはそう言うと瞬時に姿を消した。