短刀まで避けられると目がいくつついてんだよ、と思うイブナクであったが、ぼやぼやしていると自分が氷の像になりかねないため、スノーと距離を取りながら戦う。
天界のカードで攻撃魔法を発動させたが、軽く避けられた。
貴重なカードを消費しただけに精神的にはつらいが、凹んでいる暇はない。

ドリウスは氷のツタだと抜けられるから…と考えて、適当にスライムを召喚した。
ゼリー状の生命体で、魔界には数多く存在する魔物である。
スライムを集めてその中に腕をつっこみ、うわっきもっ!とか思いながらもスライムをツタ状にしてスノーの動きを止める。

炎の魔法だとスライムが焼け焦げちゃうから、とアフストイは考える。
普段は肉弾戦をやらないアフストイだが、魔法で弓を創り、矢を放つ。
スノーは満身創痍に見えたが、その矢を指で白刃取りする。
その直後、スノーの殺気が消えた。
驚くほど静かなスノーの声が聞こえる。

「はい、15分。ここまでわたしを追い詰めたのはあなたたちが初めて。あまり婆さんをいじめるもんじゃないよ。」

婆さんって言ったってアンタの強さは全く衰えを見せてないようだがいかがだろうか、と全員が問いたかったに違いない。
『助けてくれ!人型に戻れないー!』
ライアスの間抜けな念話が聞こえてきて、ライアス以外の3人の疲れが3割増になった。

「あのね、ライアスちゃん、その魔法の解呪の仕方も知らないで使ったの?」
アフストイが呆れ顔でライアス・ドラゴンに問う。
「いや、えっと。ダークに教えてもらった魔法で。その。解呪の方法はわかるんだけど。」
ライアスは解呪の方法を知っているようだが、何故か言いよどんでいる。

「あぁ、それは。」
ドリウスがイブナクの側に近寄り、耳打ちをする。
何を言われたのか、イブナクが真っ赤になるが。
「それしか方法はないんだ、やれ。」
ドリウスはニヤニヤしながらイブナクにやれという。

イブナクはライアス・ドラゴンに近寄ると、おそらく頬と思しき箇所に口付けをした。

「あーーーーーーーあーーーーーーーーああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!」
アフストイの悲鳴に近い声が聞こえる。
ライアスは「ぽふっ」と間抜けな音と共に人型に戻る。
「あ…その…スマン…ありがとう…。」
「別に…ドリウスがしろっていうから…。」
お互いに目を合わせられない空気だった。

「ダーク…が魔法を使ったときはライアスが元に戻していたのか?」
「うん。とりあえず、誰でもいいみたいで、特に条件はない。」
「じゃぁ私でもよかったよね…ライアスちゃん…。」
アフストイが涙目でライアスに詰め寄る。
「それはドリウスが悪いからドリウスに苦情を言ってくれ。」
華麗にスルーしたライアスであった。

その後、アフストイはドリウスに詰め寄るが、ドリウスはただニヤニヤしているだけだった。