「ガキどもにわたしをしとめられるわけないでしょぉ?!」
女悪魔はイブナクと同様かそれ以上の反射神経で2人の剣…合計4本の剣を両手の指で白刃取りした。
「うわなんだこいつっ!?」
ここまで反射神経がいい悪魔はそうそういない。

「Schild(シルト)、Panser(パンツァー)!!」

アフストイの声が聞こえた。瞬時に3人の前に魔力の盾と鎧が創られる。

「そろそろこれくらいの防御魔法は使えるようになってね。ライアスちゃん。」

「七罪…ね…。」
女悪魔はどんな力をしているのか、4本の剣を指で白刃取りしたまま、アフストイを射るような目で見る。
その力は強く、ライアスとイブナクが剣を抜き取る余地はない。

視線で悪魔が殺せるならアフストイは死んでいるくらいの勢いの睨みっぷりである。
「嫉妬のアフストイと申します。貴女は?」
アフストイが先に名乗る。
「憤怒のスノー。」
女悪魔が名乗った。憤怒のスノー…らしい。

魔界の最上級悪魔。
七罪のうちの1人。
憤怒のスノー。

「憤怒の君、何にそんなに怒っているのですか。」
「全部よ。」
スノーは怒りにギラギラした目でアフストイの問いに答える。
「今まで、見かけた悪魔はみんな、みーーんな、殺してきたわ。」
道理で、憤怒の目撃情報がないわけである。
今まで、憤怒に遭ったら最期。全ての者が死んできたわけだ。

「そうね、わたしのところに七罪が来たのは初めてだわ。冥土の土産に教えてあげてもいいかしら。」
スノーはそう言うと、指で白刃取りをしていた4本の剣ごと、ライアスとイブナクを持ち上げ、放り投げた。
とっさに色違いの翼を出して尻もちをつくのは免れた体のライアスと、身軽に着地するイブナク。

「冥土の土産ってことは俺達を殺す意志は変わらないわけだな。」
ライアスがつっこむ。
「そうよ、全て、全部、殺すんだから。気が向いたら殺さないであげてもいいけど。」