飛び蹴りが何よりも雄弁な答えだった。
アフストイはすぐに復活し、(悪魔の格の違いである。)ドリウスを見て言った。
「私は男とは血の契約しないの。悪いけど。」
「お前こそどっちだよ。性別わかんねーよ。」
下級悪魔が最上級悪魔に使う言葉遣いではないが、アフストイは全く気にしていない。
アフストイは灰色の長い髪の横の部分を三つ編みにして後ろ髪の真ん中で縛っている。赤みを帯びた茶色の目も顔立ちも、男とも女ともわからない顔であるうえ、ずるずるとした長い服を着ているので体型もわからない。
対するライアスはツインテールではあるものの、性別不詳の体型をしていた。
下級悪魔は翼と尻尾の隠し方を知らないので必然的に露出が多くなる。

「私は男だよ。どうせ私の名前は知ってるんだろうけど。君は誰?」
「ライアス。」
「ドリウスっす。」
「ああ、怠け者のライアスと変態のドリウスか。」
ライアスは絶句する。
「随分と、下級悪魔の事情に詳しいようで…。」
「ダークのお気に入りだった子でしょ。尻尾切られちゃって可哀想に。」
「で、変態のドリウスって…。」
「ライアスちゃんの横の白髪男だよ。」
ドリウスは相変わらずニヤニヤしている。
「最初に下級悪魔同士でつるむのは正解かなー。二人がかりでかかってこられても全然こっちの余裕勝ちだけど。あ、だから血の契約したいわけね。ライアスちゃんだけオッケーよ。」

ライアスだけ呼ばれ、ライアスはドリウスと血の契約をしたときにつけた傷口を抉った。

「まだ血の契約の痕も消えてないじゃない。節操なしだねライアスちゃんは。私も人のこと言えないけど。」
アフストイの手のひらはかさぶたにすらなっていなかった。
ライアスとアフストイは手のひらを重ねる。

ドリウスと血の契約をしたときとは違い、濃密な魔力が体内に流れ込んでくる。
ひどい頭痛がするがライアスは無言で耐える。
額には冷や汗が流れていた。