ドリウスは相手の姿を見た途端、全速力で上空へ逃げた。

白い髪で紅い目の美しい女悪魔が目の前に現れた。
それだけなら、上空へ逃げたりしなかった。
アフストイと同等の魔力を持った女悪魔は…尋常でない殺気を放っていたのだ。

翼が吹雪を受けて流されそうになるが、何とか空中で踏ん張る。
『ライアスっ、アフストイ!出たっ!多分こいつが七罪だ!』
ドリウスは2人に念話で話しかける。

「逃がさないわ…。」
女悪魔も翼を使って上空までドリウスを追いかける。
女悪魔は瞬時に爪を伸ばすと、ドリウスを斬り刻もうと襲ってくる。
「ちょ、ま、逃げない!逃げないから!なんでそんな怒ってんの!!」
ドリウスは魔力のシールドを張って防戦に入る。

「『今上空で交戦中、早く来て、ライアスー!アフストイー!』」
絶叫しながら念話で悪魔2人に伝えるドリウス。
「わたし怒ってるの…。」
「何に怒ってるんだ!」
ドリウスは地上に降り、雪原を低空飛行する。
早く、早く、ライアス達か、アフストイ…来てくれ!
悪魔に祈るべき神などいないし、そもそも魔界に神は不在なのであるが、ドリウスはライアス達とアフストイに対して祈った。

「ドリウス!どこだ!?」
ライアスの声が聞こえた。
「ここあああああ!!!!!!!」
ドリウスの翼にちょっと傷がついた。

ドリウスと女悪魔の間にイブナクが割り込み、霊銀の剣で女悪魔の爪を受け止める。
「人間ね。どうして魔界にいるのか知らないけど、殺してあげる。」
女悪魔の殺意に満ちた目を見てもイブナクは動じなかった。
「こっち向けババア!」
ライアスが魔力で創った蒼と紅の剣を持って女悪魔を挑発する。
『ドリウス、この悪魔、縛り上げられるか?!』
ライアスからの念話が聞こえてくる。
『無理だ、アフストイがいないと…、アフストイまだーーーー?!』
ドリウスはアフストイに念話を飛ばす。
『雪原で戦ってるなんて想定外だよっ、向かってるとこ!』
アフストイからの応答はライアスとドリウスに聞こえた。

「イブナク、もう少し持たすぞ。殺すなよ。」
ライアスがイブナクに言った。
「小娘ちゃんと坊やにわたしを殺せるかしら?」
「くそっ、舐めてんじゃねぇよ!」
ライアスは女悪魔に斬りかかる。
イブナクも悪魔との戦いは心得たもので、女悪魔の背後から斬りかかるが。