ライアスとイブナクは魔力が濃い場所を探して雪原をふらついていた。
「ライアス、本当にこっちで合ってる?」
「俺はアフストイじゃねぇからそんなに精密にはわかんねぇよ。」
抜き身の剣を持ったままふらふらと歩いている様子は危険極まりないが、この場に残り3人のどの七罪がいるかわからないのだ。
「さすがに悪魔といえど吹雪はしのげる場所にいるんじゃないのかな。」
イブナクが推測してみる。
「確かに吹雪は不快以外のなんでもないな。寒いしな。」
ライアスも同意する。
「ってことは…、雪原まっただ中ってのは考えにくくて、陰鬱の森の近く…かなぁ…。」
「そっちにいるってことにしてそっちに行こう。」
ライアスが特に何も考えていない顔でイブナクの考えに賛同する。
「そんなあっさり…?」
イブナクは訝しげな顔をする。
「だって吹雪の中探すのめんどくせぇじゃん。」
いつもどおりのライアスのセリフを聞いて、イブナクを溜息をつくのであった。

一方、アフストイは割と精密に魔力を追っていた。
雪原と森の境目あたりが魔力が濃いような気がするのでそのあたりを探してみる。
「こんな寒いとこにいるんじゃ、確かに見つかりようがないかもね…。」
出てくるのは、暴食か、怠惰か、憤怒か。
「吹雪に、魔力が散らされてる…かな?」
七罪から漏れ出る魔力は空気中に漂っているので、吹雪など大きな風の動きがあれば散る。
単身で七罪とぶつかってなんとかなるのはアフストイくらいだ。
それはアフストイ自身自覚している。
アフストイ的に、最も七罪と遭遇してほしくないのはドリウス単品だった。
ライアス・イブナクのペアか、アフストイ自身が先に探し当てるしかない。
アフストイはそう決意すると、少しでも魔力の濃い場所を探して雪原と陰鬱の森の境目を歩きまわった。
もっとも、アフストイ自身が嫉妬の七罪なので、自分の魔力が探索の邪魔になっていることには全く気づいていないアフストイだった。

同時進行で、ドリウス。
ライアスよりは魔力を追えるものの、アフストイに比べるとやはり魔力の追跡関連には弱い。
ドリウスだって命は惜しいので、魔力を負った結果、真っ先に七罪と遭遇なんてご勘弁願いたいのである。
「ライアスはおもいっきり武闘派の悪魔になったしな。」
おそらく育ての親にあたるダークの教育の結果だろう。
互いに互いの身体の一部を奪い合う壮絶な義理の親子だが、悪魔同士では珍しくもないことだ。
ドリウスの進行方向に何者かの気配を感じた。
この魔力の大きさは。強さは。
「アフストイ?」
ドリウスは振り返って、声をかける。