ノアは相変わらずもさもさと飯を食べながらライアス達を出迎えた。

ノアの料理の素材は人間界から転移させてきている(ぶっちゃけ盗んできている)。
その事実を知ったところで、良心の呵責を感じるのはイブナクだけであろう。

食パンを軽く焼いて、蜂蜜が塗ってある。
いちごジャムやマーガリンという選択肢もあるようだ。
ジャガイモを茹でてすり潰したものと、キャベツやニンジンと混ぜてある。
目玉焼きにベーコンとウインナーが焼いてある。
少し冷めているが、コーンポタージュのようなものがある。
飲み物には牛乳とオレンジジュースとコーヒーいう選択肢がある。

「なにこれ…、悪魔も人間界のありがちな朝飯とか食うの…?」
あまりに人間界と変わらない食事にイブナクが驚く。

「オレの料理に文句あるなら食うな、悪魔狩り。」
「マーガリンよりバターがいい。」
ノアは無言で食卓の上に転移させてきた。

「そういえばなんでマーガリンなんだ…。前はバターが多かったのに。」
ドリウスがノアに聞く。
「うまけりゃなんでもいい。」
「禿同。」
ライアスとアフストイは何の文句もないようだ。

「最近健康食品にはまっておってな。」
ノアが淡々と事実を答える。
「植物性油のマーガリンにしている。」
「さいですか…。」
「実はカロリーは全く変わらない。」」
健康を気にする上級悪魔ってどうなんだとかこっそり思うドリウスなのであった。


「どうせ北へ行くのであろう。」
「盗み聞きいくないです、ノア殿。」
アフストイがノアに言う。
「この城であれだけ騒いでいれば勝手に響いてくるのだ、仕方ないだろう。」
ライアス達はよほど騒いでいたらしい。

「別に用意しておいたわけではないが…。」
ノアはホットミルクをどこの人間界から転移させてきたのか知らないが、【マホウビン】という水筒に入れて4人に配る。
ああそうだ、あれとこれとそれと…。
4人分の乾燥食だの缶詰だのが出てくる出てくる…。

「ノアさんって。」
イブナクが話しかける。
「元は軍隊かなんかの悪魔ですか?」
「生まれてから魔界から出たことはないが、人間界の軍隊についての知識くらいは持っている。」

「ってこたぁどっかの軍隊からパクってきたわけだな。」
「盗られるほうが間抜けなのだ。ライアス、悪魔の常識を忘れてはいけない。」
ノアとライアスの会話を聞いて、僕は一生、悪魔の思考回路を理解できないかもしれない、と思うイブナクだった。