「ここから距離的に近いのは嫉妬のアフストイの屋敷だな。」
「アフストイはどんな奴なんだ。」
「ちょっと可愛けりゃ簡単に血の契約をする奴だな。好みのタイプは知らんけど。」
「っていうかドリウス、お前人間の年で数えると何歳だよ…。なんか俺がすげぇ世間知らずみたいじゃん。」
「それよりライアスにかかってるんだぞ、アフストイと血の契約できるかどうかは。」
ドリウスは相変わらずニヤニヤしている。
「なんで俺なんだ!ドリウスが交渉とか口八丁とかでなんとかしろよ。」
「とりま会ってみないと何もわかんないし、行こうよ。」

魔界上空の中級悪魔の数は少し減っていた。決着がつくところは着いたのだろう。
もっとも、悪魔の戦いのことだ。血の契約、もしくは隷従させられていない限りは三つ巴以上の戦いは日常茶飯事だ。

翼を広げ、暫く低空飛行で飛ぶ。
アフストイの屋敷に行くまでに、何人かの女悪魔とすれ違った。
ドリウスに引っ張られるように城に行ったときにはわざわざドリウスも注意を払っていなかったようだが、ライアスの翼は片翼が白でもう片翼が黒、鳥のような翼だった。
「珍しいなそれ。」
「そうかもな。ドリウスみたいに竜みたいな翼持ってる奴が多いもんな。」
「下級から中級になったら形も変わるかもな。」
暫く翼の形状で雑談をしたが、アフストイの屋敷に到着した。

「アフストイは男悪魔か?」
「性別までは知らないな。」
「女の嫉妬は恐いけど、男の嫉妬は見苦しいぞ。」
「性別上一応女のライアスがそれ言っちゃうの?」
ドリウスはニヤニヤしている。こいつのニヤニヤした顔は無表情と一緒だ。何も現していない。ライアスはそんなことを考えながら、嫉妬の屋敷に入る。

生まれながらの最上級悪魔。
七罪のうちの一人。
嫉妬のアフストイ。

わざわざ取次だの門番だのを立てるのも無意味だ。神亡き今、最上級悪魔の一人なのだから。

「今日はお客さん多いね。」

灰色の長い髪の悪魔が現れた。上級悪魔の例に漏れず、美形である。

「君も血の契約?」

「言わなくても用件がわかるってどうなんだ…。」
「悪いけど…どっち?」
アフストイに何かを聞かれたのはわかったが、ライアスは何を聞かれたのかわからなかった。
「血の契約?したいのは俺だけど。」
ドリウスはニヤニヤしているだけで何も言わない。
ドリウスとも血の契約をしている以上はライアスの持った力はドリウスにも多少反映される。
「いや、私が聞いてるのはね、君の性別。」

ライアスの飛び蹴りが綺麗に入った。