ドリウスが客室と思しき部屋に戻った頃。

人間の昼ドラという娯楽でいうところの【修羅場】が展開されていた。

「イーブーナークー…!起きてよっ!なんでライアスちゃんの布団に潜り込んでるのさっ!」
アフストイがイブナクを起こしにかかっている。
「眠い…もうちょっと…」
イブナクは起きる様子がない。

「あーもうアフストイうるせぇ、俺は疲れてんだ。」
イブナクがなかなか起きないうちにライアスが起きてしまった。
「なんだ、何の騒ぎだめんどくせぇ。イブナクが寝る場所がなさそうだったから一緒に眠ってただけだ。」
「えっ、ライアスちゃんが一緒に寝ていいって言ったの?」

ライアスは心底面倒そうな顔でアフストイを見る。
「一緒に眠ってただけだ。それ以外の何に見えるんだよ。」
「あのねライアスちゃん、♂と♀が一緒に寝るっていうことはね、むぐっ」
ドリウスがアフストイの口を塞いだ。

アフストイはドリウスの手を引き剥がすと、恨みがましい目でドリウスを見返す。
「お子様に何を言ってもしゃーなし。」
ドリウスはニヤニヤしながらアフストイを見る。
「一人寝が寂しいならオレと一緒に寝よう。」
アフストイの顔が青くなるが。
「特に何をする気もないけど…してほしい?」
ドリウスがちょっぴりイケメン風にアフストイの耳元で囁く。

「いらないっ!」

アフストイはそう叫ぶと転移を使ってどこかに消えてしまった。

「ライアス、あのね。」
ドリウスがライアスを諭すように話しかける。
ライアスは首をかしげた。
「ある程度の年齢になると普通、特別な理由でもない限りは男と女って一緒に寝ないんだよね。人間も悪魔もそこだけは一緒。天使達は知らんけど。」
「特別な理由ってなんだ?」
ドリウスはニヤニヤしながらはぐらかす。
「もうちょっと大人になったら教えてあげてもいいけど、ユーギットがやってることを考えれば想像つくんじゃね。」

色欲のユーギット。彼がやっていたことは…。

ライアスは耳まで赤くなり、イブナクを見る。
無害かつ無邪気な顔で眠るイブナクを見ると起こす気にもなれなかった。

「俺が男だったらめんどくさくなかったのになぁ。」
ズレた観点でつぶやくライアス。
「男同士でも、できないこともないというか。」
ライアスは今度は真っ青になる。
「もういい、めんどくさい。寝る。」
赤くなったり青くなったり忙しいライアスはまた布団に潜り込んでしまった。

いつかは教えなきゃいけないこととはいえ、これじゃオレ、セクハラオヤジじゃまいか…。
ドリウスは溜息をつくとまた部屋を出て、城内を散策することにした。