一方、学習室に来たドリウスは資料を漁っていた。

有効な資料は古びた日記だけだった。
日記の最初のページから慎重に目を通すが、日記の持ち主は誰だかわからないままだった。

ドリウスはその日記を持ち、ノアに会いに行く。

調理室に入るが、ノアは全く驚いた様子がない。淡々と菓子を作っている。
「ここのところ、この城に居着いているようだが。」
ノアは城の中の気配で何者かが侵入したことがわかるようだった。
どこまでの力を秘めているのかわからない、恐ろしい上級悪魔だった。

「先代の神は堕天使。決して居心地が良い城ではあるまい。」
「いや、それはそうなんすけど。」
ドリウスは黙って古びた日記をノアに見せた。ノアに表情の変化は見られなかった。
「これの持ち主を知りたい。ノアさんなら知ってるかと思って。」
ノアは一応、ドリウスが持ってきた古びた日記に目を通す。
「心当たりは…ないな。」
ノアは古びた日記を閉じるとドリウスに渡した。

「かつては天界の気配で居心地が悪いなりにも、沢山の悪魔がルファン様に心酔し、この城に集っていた。」
ノアは神ルファンが生きていた頃の城の様子を話す。
「だいたいは上級悪魔が多かったが、その大多数の中から特定の者を探しだすのは難しい。」
ノアはドリウスに問う。
「小娘の親は上級悪魔だと思っているのか?」
「そうだけど、純血の悪魔ではないんじゃないかと思って。」
ドリウスは答える。

「混血の悪魔など珍しくもない。」
ノアが言い切った。

「何故、あの小娘の出生にこだわる?」
ノアがドリウスに聞いた。
「ライアスの姿を一目見た時に。こいつについていけばあちぃと思った。」
だから押し切る形で血の契約をして、また、押し切る形で真名の契約をした。
「お前も小娘ももうオレとて油断できる相手ではない。」
ノアはそう言うと菓子作りに戻った。もうドリウスと話すつもりはないらしい。

ドリウスはろくに収穫を得られないまま調理室を出た。

ドリウスは、ただ、根拠を得たいだけだった。

どうして。

尻尾を奪われたライアスを一目見た瞬間。

こいつについていけばあちぃと思ったのか。