「手に負えない!加勢を!」
リーダーはすぐにイブナクと自らの実力差を見抜き、他の勇者志願者に加勢を求める。

リーダーの指示と共に矢や魔法がイブナクを目がけてとんでくる。

「イブナクっ!!!!!」

ライアスは叫ぶと、イブナクと勇者志願者たちの間に立って加護のカードを発動させた。

「どぎゃん子供でっちゃ容赦せんばい!」
魔法使い風の老婆がライアスに向かって、魔法で創りだした光の矢を投げる。
「ああもうめんどくせぇ!」
ライアスは常人の目には映らない速さで老婆に近づくと、首筋に手刀を入れる。次は中年男に手刀を入れる。
老婆と中年男が気絶し、昏倒する。

「たった1人に数人がかりでかかっていくのが人間のやり方か。それなら人間も悪魔も変わらないな。」
ライアスはさらに畳み掛ける。
「種族が違うだけで、おめぇらだって同類だ。」

リーダーにはライアスが言った言葉が堪えた。
しかし、ありえないと思っていた事実を実際に見てしまったので、呆然とした顔をしている。
「どうして悪魔が人間を護るの…。」
「気紛れ。」
ライアスは即答する。

「ま、おおかたアホな悪魔どもに身内を殺された奴らなんじゃないの。」
ついさっきまで七罪同士で魔法合戦をしていたと思えない軽い調子でアフストイがつぶやく。
「神隠しはだいたい色欲がやってることだしねー。」
アフストイはリーダーに向き直る。

「確かに悪魔は悪だけど、程度問題。アーヤ軍でしょ。」
アフストイはいつものニコニコした様子で何事もないかのような顔で、リーダーに言う。
「魔界を制圧するなら王自ら来いってね。」
しかし声色は怒っていたし、殺気も放っていた。

「ライアス、行こう。」
ドリウスがライアスとイブナクを両脇に抱えてアフストイに近寄る。
『城へ。』
ドリウスからアフストイへ念話が届く。
『りょーかいっ!』
アフストイは数秒で転移の術式を完成させると、
「じゃぁねぇ、勇者志願者さん。魔王亡きこの魔界で何を倒すのか知らないけどさっ。」

アフストイの言葉を最後に、4人は勇者志願者達の目の前から消えた。