「魔界の、神。どうやったらなれるんだよ。」
ドリウスがノアに食いつく。
「七罪の力を得ることだな。」
「七罪?」
「小娘、それすら知らないのか…。人間界で、人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情のことだ。魔界には生まれながらの最上級悪魔、七罪がいる。傲慢、強欲、憤怒、怠惰、色欲、嫉妬、暴食だ。」
「怠惰とか…ライアスだろそれ。本物の怠惰なら尻尾切られてないだろうけど。」
爆笑するドリウス。ライアスは面白くなさそうな顔をした。
「その理屈だとルファン様は七罪から力を奪ったんだろ。今頃七罪の力を得ようと思っても抜け殻なんじゃないの。」
「怠け者ではあるが馬鹿ではないようだな、小娘。」
「うるせぇ。」
「先代の神のルファン様が殺さなかった七罪には力が戻り、殺された七罪は既に転生している。ルファン様に力を奪われた悪魔にも奪われた当時の力が戻っている。」
「おいおい、ちょっと待てよ…。」
俺たちが城に侵入した時に戦っていた中級悪魔達は神の座を争っていたとでもいうのか?
「当然だが七罪は強い魔力を持っている。塵も積もれば山となる。今、力を集めている悪魔達は七罪の力を得ようとしている。平穏に、安穏と過ごしたければ神になることだな。多少苦労するだろうが、一生パシリとして使われるよりは悪くなかろう。」
そりゃアンタみたいな上級悪魔にとっちゃほんの一手間だろうけどな。ライアスはノアに反抗的な視線を向けたが、ノアは気にした様子もない。

「強欲と傲慢と憤怒は好戦的なことで有名だ。嫉妬と色欲は比較的簡単に血の契約をするようだな。暴食は知らん。傲慢、憤怒、怠惰、嫉妬は転生して魔界のどこかにいるはずだ。」
「おっさんなんでそんなに詳しいんだよ。」
ノアの詳しさに疑問を持つライアス。ノアは遠くを見るような目をした。悪魔には本来ありえないような悲哀を帯びた光だった。
「ルファン様が魔界に現れる前から生きているからな。」
「ただ長く生きてるだけってのも威張れたもんじゃないよな。」
ライアスは嫌味を言ったがノアは全く気にしていない。