時を同じくして。

「傲慢の君、私と血の契約をしてくださいませんか。」
長い黒髪を三つ編みにした悪魔…ダークが傲慢のサキマに血の契約を頼み込んでいた。

ライアスの尻尾を奪ったダークだった。

「へぇ、上級悪魔ダークの名前は知ってたけど、それなりに力を手に入れてんねぇ?」
「はい。七罪のうち、色欲と怠惰を。」
「怠惰!?どこにいたんだろう…、まあ、居場所がわからないってことは七罪の中でも弱いのかもしれないな、気にしなくていいかもね。」

サキマはダークをじろじろと見る。
ダークはサキマの機嫌を損ねないようににこやかに立っている。
「うん、気に入ったから血の契約くらいだったらしてやってもいいよ。」
「では。」
サキマとダークはそれぞれ自分の手のひらに軽く傷をつけ、出血させ、手のひらを重ね合わせる。

サキマの強力な魔力がダークの体に流れ込んでくる。
ダークは床に膝をつきそうになるが、耐える。
サキマは格下の悪魔を嬲る趣味はないらしく、あっさりとダークの手を放す。

「そうだ、ダーク…、ダークって、ライアスの面倒を見ていたというあのダーク?」
サキマからライアスのことを尋ねられて少々驚くも、ダークはそれを肯定した。
「ライアスとかいうガキ、ちょっと前までここにいたけどね。嫉妬の君と、悪魔狩りと、変態のドリウスを連れてた。」
悪魔狩り…?どういう縁で知り合ったのかダークは見当がつかなかった。
しかしそれは今のダークは、知る術がない。
「あのガキ、だいぶ力をつけてきてやがる。この屋敷から出た時はもう上級悪魔になってた。同じモノを目指すなら気をつけるんだな。」
そう言いながらも、もし目の前の男が怠惰を殺した後であるのなら、後々サキマとも戦うことになるだろう。

サキマがそんなことを考えていると、部屋の扉が少々手荒くノックされた。

「どうした、アバドン。」
サキマは執事に事情を尋ねる。
「サキマ様、少々数の多い人間が陰鬱の森に突然現れました。この屋敷を目指してきております。」
アバドンは淡々と事実を告げる。

「へぇ…、屋敷の警備を固めといてくれる?」
「かしこまりました。」
サキマは全くうろたえた様子もなくアバドンに淡々と命じる。
「ここんとこお客さん多いなー。」
サキマは少々面倒くさそうにつぶやいた。