「私は上級天使のイヴファルトと申します。姉ルファンの仇を討ちに参りました。」

「仇…?」
「ルファン様って殺されたのか?」
「わかんない。私は魔界の神ルファン、死去ってしか聞いてない。」
「アフストイがそうなんだったら俺やドリウスが知ってるわけはないな。」

ライアスとアフストイの間で会話があった。
そこに突然、別の声が割って入る。ライアス達にとっては聞き覚えがある声で、天使にとっては初めて聞く声だった。

「ルファン様は自然死…と言えるだろう。ルファン様の血縁か。道理で似ているわけだ。体型以外。」

「ノア!」
ライアスが少し緊張の解けた声でノアの名を呼ぶ。
ノアとしては、別に悪魔勢に加勢するために来たわけでもないし、イヴファルトに説明しにきたというわけでもないのだが…。
ノアはイヴファルトに淡々と事実を語る。
「ルファン様は天界を憎み、人間界を嫌っていた。翼ある者から無実の罪を理由に片翼を奪ったのだ、当然だろう。それを阻止できなかった血縁者までを恨んでいるかはわからないが。」
イヴファルトは呆然とする。
「ルファン様は生き残るために魔界の神となった。天使の娘、何故今更魔界に来た。もう何もかもが手遅れで、何もかもが終わってしまったこの時期に。」
「…本当に…姉様は逝ってしまわれたのね…。」
ドリウスが気づく。
「本当に、ってことは、どこからか情報を手に入れたってことだな。」
「えぇ。ある御方から。」
「ちっ…魔界に内通者がいるな…。」
その内通者の役割をまさか自分たちがやったとは思っていないライアスとドリウスであった。

「でも姉様が亡くなったからといって、このまま帰る気はありませんわ。」
いかにも深窓の令嬢といった風情の天使の娘は紫の目に強い意志を宿した。
「この世界は…、魔界は…、わたくしたち天界が掌握します!」