「魔界の神ルファン、死去」

ある日、魔界を駆け巡ったこの報せは魔界中を震撼させた。

しかし、下級悪魔ライアスはいつもどおりぼけっとしていた。
悪魔の中では珍しく平和主義の日和見主義…と表現すれば聞こえがいいが、要は面倒くさがりなのである。
どのくらい面倒くさがりかというと下級悪魔の中で知らない奴はいないくらいの面倒くさがりなのであった。

そのぼけっとしていたライアスのところに現れたのは人間で言うところの友人、といった関係のダークであった。

「ライアス、ルファン様が崩御されたのを知っているかな?」
ダークがライアスに尋ねる。

「うん。知ってるけど興味ないや。」
「そうか。」
ダークはため息をつく。

「直球で言うと魔界を掌握するために力を貸してほしいわけだが。」
「やだ。めんどくさい。」
即答である。

「だって魔界を掌握するのって大変だろぉ?そんなめんどくさいのやだね。」
ライアスはぶんぶんと首を振って嫌がる。
それに併せてライアスのツインテールと尻尾もゆらゆらと揺れた。

「私の頼みでも断ると?」
「うん。俺みたいな下級悪魔の力なんて何の役にも立た…」

ダークは瞬時に爪を伸ばし、ライアスの尻尾を切り落とした。
「いてぇ!なにすんだよ!」
ライアスがダークに抗議する。

「黙って力を貸してくれればこんなことせずにすんだよ?」
ダークは何食わぬ顔でライアスについていた尻尾を持っている。

「ライアスが下級悪魔に甘んじているのは悪魔としての力をつける努力をしなかったせいだよ。体の一部を奪われた悪魔がどうなるか知ってるだろう。」

「知ってるよ!だから怒ってるんだろ!ダークは友達程度には信用してたのに!」

「悪魔に義理人情を求めるなんてどうかしてるね。いや、むしろその程度の情はあったから尻尾ですませたのかな、私は。」
ダークが邪悪な微笑を浮かべる。

「ライアスは私の下僕だよ。たった今からね。」

ダークはそう言い残すと翼を広げ、三つ編みをなびかせてライアスの前から飛び立っていった。