「…元気だったか?」
『うん。…心配かけてごめんね。』
「いいよ、別に。」
姫梨はすごく、すごく申し訳なさそうにしていた。
ここで他愛もない話をしても意味はないし、小さく息をはき、あの日の真意を聞いた。
「…なんで、23日来なかったの?」
一瞬、ビクッと肩を震わせた姫梨は、何かを決心したかのように小さく手を握りしめて、言った。
『…翔ちゃんさ、私に…愛してるって、言ったことないよね。』
「は?何いきなり。」
『でも…他の子には、言うんだね。』
意味がわからなかった。
俺が好きなのは姫梨だけなのに、なんで他のやつにそんな大事なこと言うんだよって。
『私、聞いちゃったんだよね。…友香に、愛してるって言ってるとこ。』
「……ちょっと待って!あれは!」
『最近…素っ気なかったのは、そのせい?私…あんな優しい顔した翔ちゃん、見たことないもん。』
やっとわかった。
あの時、姫梨は学校に来てたんだ。あの瞬間だけを、見てたんだ…。
『受験勉強が大変だからって、そう考えようとしたけど…無理だった。私、無理だった…。』

