微かに香る甘い匂い。
女ものの香水。
以前に嗅いだけとのあるこの匂い。
社会科教室…
そう、中村先生の匂い。
「…真央、風邪引くよ。」
「う、ん」
玄関で立っていた私を手招きして呼ぶ。
「ね、何処に…行ってたの?」
着替える敦の後で、勇気を持って声をかける。
「んー…居酒屋?」
語尾にクエスチョンを付ける敦。
…怪しい。
「…だ、誰と?」
そう、ここが重要。
「んー…知り合い?」
酔っているせいかなかなかはっきりした答えが返ってこない。
…敦、不安なんだよ?
ちゃんと答えて?
そんな思いは伝わらず、敦は口を開く。
「…風呂。」
「あ、う、うん…」
敦は私に背を向け風呂場に行ってしまった。

