その[約束]も今はもう消えてしまった。
由衣の記憶喪失によって。
オレは、この満開の[桜の木の下]で、ため息をつくばかり。
この満開の桜も
由衣は忘れてしまってるだろう。
二人で行った色々な所も
忘れたにちがいない。
オレの中で何かが動きだす。
忘れたのなら
また行けばいい。
忘れた記憶を取り戻せるかもしれない。
込み上げてくる感情。
それがなんなのかは、オレにはわからなかったが
オレの中で何かが動きだした。
オレの中で止まっていた時間。
6年という止まっていた時間が、またゆっくりと動きだす。
6年の歳月を経て、オレの[恋]がまたゆっくり刻々と動きだした。