私は忘れたよ‥

会社に着くと駐車場で書類を片手に京吾が立っていた。

書類がカムフラージュだと気づいたのは満面の笑みで私を待っていたからだ。

停止させた車から降りながら
「おはようございます」
と上司に向かって挨拶をする私に「おはよう」
と愛しさを込めて挨拶をする。



「どうしたんですか？所長？」
と誰が通りかかっても怪しくないように話した。
「…別に一番に会いたかったから」
京吾は大人だけど時にとても直情的な人だ。

照れながら話さないその言葉を聞いてこっちの方が恥ずかしくて目線を外した。
「事務所の誰よりも一番に君におはようって言いたかった」


半ば呆れているフリをしながら
「それはそれはありがとうございます」とからかうように深々と頭を下げると
「いえいえどういいたしまして」
と言って京吾も頭を下げて見せた。


幸せだ。


この人は私のお薬だと思う。


私の心が壊れないように癒やしてくれる。