私は忘れたよ‥

京吾の横にゆっくりと車を停めた。


乗り込んできた瞬間、京吾の匂いがした。


タバコの匂いだ。


何から話せば良いのかわからなかった。


「どこに向かえばいい?ここじゃまずいでしょ?」
と前を見つめたまま言った。


んー…そうだな…とほとんど呟きかと思われるほどの小さな声で京吾は答えた。
その声を聴いて涙が出そうになった。

京吾はみんなの前で使う声と、二人で居るときに使う声が違う。


私と居るときは気を許してくれているのか、気を抜いているのか…
少し低い声になる。

私はこの声が大好きだ。
心地がいい。