「ほら、これが写真。これだけの美人、人違いじゃないと思うんだけど・・・」

長い長い英語の授業が終ったあと、竹田が自身の携帯電話の画面を見せてくれた。


画面に写っていたのは――

間違いなく、「彼女」だった。


あの小さい携帯電話の画面の中でも、「彼女」は女神のような美しさだった。
通常ならば遠巻きにしか見ることができないのだが、今は「彼女」の顔を間近に見ることができる。

――あぁ、キレイだなぁ

「ちょっと、三上くん。ずっと見てないでよー。この人で合ってる?」

「え?あ、うん。この人で合ってる。間違いないよ」

僕は気づかないうちに画面の中の「彼女」に見入っていたようだ。

「もー、三上くんったら。美人なのはわかるけどさぁー。私もこんな美人だったらなぁ」

竹田は苦笑しながらつぶやく。

「ご、ごめん・・・。つい」

「別に謝ることじゃないけどさぁ。三上くん、この人のこと知りたいんでしょ?」


「・・・うん」

返答に少し時間がかかってしまった。
素直に肯定してしまうと、自分が「彼女」の事を好きと言っているようで。
それに・・・「彼女」のことを知ってしまうと今までのような遠く眺めるだけの存在ではなくなってしまう、そんな気がして知るのが少し怖かった。

でも、何かを愛すると言うことは知ること。名前ぐらい知ってもいいだろう。

「美人さんの名前は――」