「お、春之じゃん!おはよー!」
僕が下車してすぐに声をかけてくれたのは、自転車にまたがった、小学生の頃からずっと一緒の山本大樹だ。
大樹は家も近く、昔からよく遊んでいる友達だ。
「おはよう、大樹」
学校は目の前なので、大樹は自転車から降りて歩いている僕にあわせて自転車を押しながら歩く。
「春之、今日もまた電車かよ。自転車の方が気持ちいいって」
「いや、自転車パンクしてるからしばらくは電車かな」
僕が春先なのに電車通学しているのは、本当に自転車がパンクしているというのと、実は、冬から「彼女」を発見してからなかなか電車通学をやめられなくなったからだ。
「そうか、電車には美人の『彼女』がいるもんな」
大樹はにやにやしながら僕の顔を覗きこむ。
「い、いや、本当にマジで自転車パンクしてるだけだしっ」
「ホントにそうなのかなぁ春之くん?」
「・・・本当だしっ」
僕は平静を装うが、
「春之はすぐに顔にでるから、嘘つけないね!」
大樹はけたけた笑う。
